何かから逃れるように、僕は強い酒を胃に流し込んだ。
それでも心は落ち着かず、身体も温まらず、自分で自分をあたためるように膝をかかえ、そのまま床に倒れ目を閉じた。
「どうするつもりなの?」
ふいの声に振り向くと、鼻の頭を真っ赤にしたナナが立っていた。
「鍵ぐらい締めときなさいよ」
そう言うと、彼女は、ずかずかと部屋に上がり込み、テーブルの上の水色の箱から赤いカードを取り上げた。
<X'masの夜 あなたの元に幸せが運ばれますように。エリコ>
「エリコっていうのね」
「関係ないよ」
「関係ないなら、なんでそんな風に苦しむのよ」
「ほっといてくれよ」
「ほっとけないわよ!」
僕たちは、それっきり何も喋らないまましばらく違う窓を見ていた。
僕の見る窓の先には、公園通りのイルミネーションが輝き、ナナの窓には暗い山陰がうつっている。
「好きなんでしょ」
ナナが、かすれた声で聞いた。
「・・・・」
「会いたいなら、会いたい、好きなら、好きだって言わなきゃ、わからないわよ」
「そんなんじゃないよ・・」
「人は、そんなに親切じゃないわ。心だけで伝わるなんて嘘よ。
言葉を尽くさないと伝わらないこともあるわ」
ナナは立ち上がると電話を取り、彼女のカードの最後にあった電話番号を押した。
そして、受話器を僕の前に置くと、部屋を出ていった。

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