クリスマスまで、あと1週間。街中にクリスマスソングが流れている。
 本店のある商店街には、等間隔にクリスマスツリーが飾られ、
イルミネーションの施されたショーウィンドウの中で、小さなパーティーが始まっている。
 
「夕べ、アパートに帰らなかったの?」
「いや」
「このごろ、いつ通っても明かりがついてない」
夕方、ナナが僕の仕事を手伝いながら言った。
「僕だって、たまには一人で飲みにいくさ」
ナナの心配げな言葉が鬱陶しく、荒げた声をだすと、ナナは「そう」と言って、
プラスチックケースを僕につきつけ自分の持ち場にもどった。
僕は自分でも説明のつかないいらだちをかかえている。もう、どう処理して良いかわからない。
ナナに当たっても仕方の無いことなのに、そのいらだちをぶつけられる相手はナナしかいなかった。
着替えを済ませて暮れた裏通りにでると、ナナが待っていた。いきなり僕の首にマフラーを巻き付け
「なんだかわかんないけど、心が寒くなっている人を、あたためてあげるわ」
と、僕の腕をひっぱった。
いったい何軒の店を回り、どのくらい飲んだのだろう。
僕はナナの肩に身体を預け、街を浮遊し、ナナはいくら飲んでも酔えないわと、僕を担いで店を渡り歩いていた。
ふらふらとした足取りで、最後にたどり着いたのは、細い煉瓦通りの先にある小さなバーだった。
人なつっこいマスターがいて、細身で美人の女の子がいて、憶えているのはそれだけ。
僕は、椅子に座るなりカウンターに凭れ込んだ。
 耳元に、優しいクリスマスソングが流れている。僕は、その音楽の中に溶けこむように眠りに落ちていった。

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