| 4 「最近、なんか落ち着かない感じだな」
12月の1週目。店長が、サインした伝票を渡しながら、僕をからかった。僕は、そんなことないですよと伝票を受け取る。
確かに、最近の僕はおかしい。
あの日以来、僕は、気が付けば、クリスマスリースの女の子のことを思い出し、夢想にふけっている。
彼女の息のぬくもり、ささやくような声、本をめくる指の動き・・・。そして、鏡のなかで小さく手を振る姿。
僕は、その中のどれ一つも忘れたくはなかった。
「じゃ、また」
仕事を終えて店を出ようとすると、「忘れ物だよ」と店長が声をかけた。
胸のポケットやプラスチックケースの中を確かめる僕に、彼はレジ台の下から水色の四角い箱を出し、にやっと笑った。
「例の女の子が、本屋の人にって置いていったよ」
「・・・・」
一瞬にして、僕の体の油は切れた。ぎりぎりと音をたてながら手を伸ばし、不器用に箱を受け取る。
「つき合ってんのかい」
「いや・・・」
「あの子の方は、本屋さん、本屋さんって、やけに親しげだったぜ」
僕は、浮き足だった心を店長に気づかれないよう、精一杯乱暴に水色の箱をプラスチックのケースに放り込んだ。
箱の中から、かさかさっと冬の音がした。
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